こんにちは!QTnetの山﨑です。
米大リーグ・エンゼルス大谷選手の快進撃に沸く日本、すっかり私もファンの一人になりました。
齢23歳でアメリカに渡り、寄せられる期待にプレッシャーがかかるなか、画面から伝わってくるのは
「いきいき、のびのび」とプレイしている様子。いらぬ心配とはこのことですね。
世界のトップリーグで快挙を続け、新しい記録や伝説をつくっていく大谷選手。
これまでにない「二刀流への挑戦」に目が離せません。
 
さて、前回は「教育不足」が原因?仮想通貨「NEM」580億円流出」についてお送りしました。
2018年1月、外部からの不正アクセスによって約580億円分の仮想通貨が流出したという事件。
これは従業員へのセキュリティ教育が行き届いていなかったことが要因の一つと
サイバー犯罪対策テクニカルアドバイザー・小出教授が指摘していましたね。そこで従業員が
最低限やっておくべき「3つのセキュリティ」について教えていただきました。
 
もう一度読みたい方は≪アーカイブ≫からお読みいただけます。
 
3回目はスペシャリストが解説「サイバー攻撃に直面した社員がとるべき行動」についてお送りします。
コンピュータに関する科学捜査「デジタルフォレンジック」を専門に行うスペシャリスト・杉山さんに
「サイバー攻撃」を受けてしまった場合の対応方法や間違った初動などについて伺いました。
 
それでは、 お付き合いください。
 
 

<今回の特集>
1  コンピュータに関する科学的調査手法・技術「デジタルフォレンジック」
2  「正しい対応したはずなのに…」感染後に被害が拡大した理由
3  「大誤算」サイバー攻撃に直面した社員の間違った行動
4  スペシャリストが警告「セキュリティ対策はコストではなく投資」

 
 

1 コンピュータに関する科学的調査手法・技術「デジタルフォレンジック」

サイバー犯罪を捜査する「デジタルフォレンジック」という仕事を聞いたことがあるだろうか。
「フォレンジック」は「犯罪捜査における分析・鑑識」を意味し、デジタルフォレンジックとは
サイバー犯罪や訴訟の対応に際し、パソコンやネットワーク環境から電磁的記録を証拠として
収集し分析する一連の調査手法・技術をいう。15年ほど前からデジタルフォレンジックに携わり、
現在は新日本有限責任監査法人 FIDS(不正対策・係争サポート)事業部のデジタルフォレンジックス
チームであるFTDSの日本エリアリーダーを務める杉山氏は「ひとことで言えば、デジタル環境全体を
対象とする捜査員」と説明する。















 
デジタルフォレンジックに従事する専門家は、決して多くはなく、そのニーズは年々高まっているという。
警察庁の統計によると、2017年のサイバー犯罪の検挙件数は9014件(前年比+690件)で過去最多。
相談件数は13万11件と高い水準で推移している。杉山氏は「サイバー攻撃は防ぎきれないことを前提に
対策しなければなりません。アンチウイルスソフトなどのセキュリティ対策を導入していても、完全に
駆除することは難しいのが現状です。」と警鐘を鳴らす。
 

 

2 「正しい対応したはずなのに…」感染後に被害が拡大した理由

杉山氏によると、サイバー事故の課題は技術面だけではなく「人材・組織づくり」にもあるという。
 
サイバー攻撃を受けた場合の対応指針は、たいていの企業が備えているだろう。
しかしその対応で十分だろうか。近年のサイバー攻撃では「Lateral Movement(横展開)」と呼ばれる
社内・組織ネットワークを標的にした一斉攻撃が主流。
しかし「横展開」に対する認識が不足していたため感染後の初期対応を誤り、被害を拡大させるケースが
目立っていると杉山氏は指摘する。
1件の個人情報漏えい事件について見てみよう。
 
ある法人で1台のパソコンがアンチウイルスソフトに反応した。担当者はマニュアル通り、
パソコン端末をネット環境から切り離し、あやしいファイルをセキュリティ会社に送った。そのファイルを、
解析してもらい、アンチウイルスソフトを最新版に更新して対応を終えた。しかしその後感染は拡大し、
大規模な流出事故を起こしてしまったのだ。














 
 
 
「1台感染したら、つながっている組織内のパソコンも感染しているかもと疑い、最低限の原因分析等を
すべき」と杉山氏は説明する。
企業や組織ネットワーク全体を狙ったサイバー攻撃は、組織内に存在する各システムやPCに侵害を繰り返し
目的(情報の窃取、暗号化、仮想通貨の採掘活動など)を達成するまで継続される。
そのためウイルスが露見した1台だけ対処しても、そのシステム内ではすでにアンチウイルスソフトに
引っかからなかったウイルスがまん延して任務を遂行し、大きなインシデントを引き起こしている可能性が
あるという。
 



3 「大誤算」サイバー攻撃に直面した社員の間違った行動

従業員の認識不足から生まれる誤対応は他にもある。杉山氏は遭遇したケースを「立ち入り禁止の
黄色テープで保全されていない感染現場」と例える。ウイルス感染したパソコン端末の解析依頼が
持ち込まれる際、被害端末上に復旧作業用のアカウントを新設していたり、ウイルスそのものを
専用ソフトで駆除したりしているケースがあるという。
もちろん依頼者に悪気はないのだろうが、「証拠を被害者自身が踏み荒らして消すようなことにつながります」
と警告する。サイバー犯罪の現場でも証拠となるパソコンなどはそのままの状態で渡すことが鉄則だ。














 
 
では、被害を防ぐためにどう対処すべきなのか。
杉山氏は「サイバー事故対応を大規模災害時の事業継続計画(BCP)と同じようにとらえ、
事前にトリアージ(優先順位付け)とウイルス感染などのサイバー事故を想定した訓練をしておくことが
重要」と話す。
 
企業内でサイバー事故が起きると、たいてい「早急に企業運営を再開したい側」と「原因を究明したい側」の
対立が生まれるという。意思決定の手順を明確にしておかなければ原因究明が遅れ、それが公表の遅れに
つながるなどして、信頼の低下など必要以上の損害を被りかねない。社内各部門の役割と責任を明確にした
対策組織をつくっておくことが、被害を最少に食い止めるのだ。
 
 
 

4 スペシャリストが警告「セキュリティ対策はコストではなく投資」

杉山氏は「セキュリティ対策はコストではなく投資」と強調する。















 
サイバー犯罪の攻撃者はアンチウイルスソフトに引っかからないウイルスを日夜生み出し、送りつけてくる。
企業も個人も「感染する」という前提で対策する時代だ。そんな中、サイバーセキュリティに十分な投資を
おこなうことは消費者や取引先の信頼を勝ち取り、企業にとって付加価値を増すことになるのだという。
 
また、サイバー犯罪には知らないうちに加害者にされる怖さもある。実際にあった事例では企業がパソコンを
乗っ取られ、遠隔操作によってそのパソコンから世界中に攻撃メールが発信されていた。このような場合、
無実を立証するために係争に発展する恐れもあるという。
 
「対策に終わりはありません」と杉山さん。技術面、人材面での十分な準備をした上でサイバー犯罪の動向を
日々チェックし、自分事として防御策の改善や想定訓練を繰り返すことが、企業の信頼を失わないための
一番の近道だといえるだろう。
 
 

<あとがき>
 杉山さんによれば近年のサイバー攻撃は横展開が主流。「1台感染したら、つながっている組織内のパソコンも
感染している可能性が高い」とのこと。「サイバー攻撃に直面しても冷静に対応できる」と自信を持って
こたえる方はどのくらいいるのでしょう。情報流出した場合の損害額は平均で6億円といわれています。
杉山さんの指摘にもありますが、セキュリティ対策は「コストではなく投資」と考え、日ごろから社員教育や、
事業継続計画(BCP)の制定などを備えておけば、6億円もの被害を出さずにすむかもしれません。





<サービスのご紹介>

▼QT PRO セキュアモバイル

インターネットを使わない安心・安全の通信。

SIMカードを利用して、社内ネットワークへの接続を可能にします。

データを持ち歩くリスクを回避するだけでなく、外出先からより安全

に「重要なデータ」へアクセス。「万が一」のリスクに備え、安心して

テレワークを行うための心強いツールなのです。
 

▼QT PRO 仮想デスクトップ

訪問先や自宅でも「いつものデスクトップ」で作業を開始。

専用サーバーを経由した「仮想環境」で作業するので、利用したPC

やモバイル機器自体にデータが残らず安全です。たとえば台風や

大雪のような災害時、自宅やサテライトオフィスからアクセス

できれば緊急対応時でも、迅速でベストな働き方が実現できます。

快適な環境でテレワークを実行するサービスです。
 

▼QT PRO マネージドセキュリティ

サイバー攻撃や不正アクセスの対策を考えているけれど、専門的な

知識を持つ担当者がいない……。それならクラウド型で機器の購入

や設置、買い替えが不要の「QT PRO マネジードセキュリティ」。

セキュリティに関する専門的な知識も操作も不要です。専門家による

運用で24時間365日監視して、不正なアクセスから守ります。運用か

ら分析まで一括管理でセキュリティ運用コストの軽減を可能にします。